A vanishing word, a vanishing place.

そしてまたここにたどり着く。

Does the sea breeze soothe or erode the soul?

 不要不急の緊急事態宣言中ではあるが、都内の水辺を訪れた。風は十分に潮をはらんで、肌をべたつかせる。それでも、ぼんやりと白波を眺め、鴎や行き交う船を見送る。ソーシャルディスタンスもばっちりな場所では、小さいスピーカで音を鳴らしても、怒られることもない。

 誰かにそうしたように、誰かにそうされたように、僕はそうするべきだと決めたから、海とも運河ともいい切れない人工浜のある場所でそうしてきた。心が少しくたびれてしまっている友人のための過ごしやすい場所……水辺を選び、ただただ側に居る。僕ができることはそれくらいしかない。それでよかったのかは僕が決めることでもない。

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 くだらない雑談をしたり、黙ったり、そうしているうちに髪は潮風でバリバリになり、マスクも潮臭くなった気がする。薄曇りの空は少しだけ雨を降らせて、僕らの帰路を後押しした。潮と砂を洗い流したくて、何ヶ月ぶりかに銭湯に行った。上がって出た肌に夜風が気持ちよかった。たぶん、これでいいんだろう。たぶん。正解はわからない。後になってこれでよかったんだと相手が思い出してくれれば、正解なだけ。


 いつかできたことも、できなかったことも、たくさんある。いまできることはこれくらい。分断された世界で、側にいるよ、と側にいる。それだけ。

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