A vanishing word, a vanishing place.

そしてまたここにたどり着く。

See you at the new location.

 緊急事態宣言が解除されて、東京アラートも解除されて、その期間にどんどん利用した店、見知った店が消えていっている。そんな中、コロナとは関係ない理由で知人(友人でもいいんだけどなんか気恥ずかしいので)の店が6月で閉店するというのが入ってきたのが、4月の頭。そのまま自粛休業を続け、そして6月の第2週の一週間、店を開けてそして閉めるという、最後の一週間。

 ニュースでは毎日、夜の街、夜の街と言われる新宿エリア。そこに店はある。正直、悩んだ。けど、僕は行った。小さな店は密にならざる得ない、下手すると入れないかもしれない、けど行くべきだと思った。久しぶりの新宿区。夜の街クラスタと言われていたのは歌舞伎町界隈だけだったらしく、店のある御苑方面や新宿南口、帰りに通った新宿通りも地下道も全然人がいなかった。終電もはるか前なのに、始発前に駅に向かうときよりも人の居ない新宿に驚いた(それから数日後、靖国通りをタクシーで通ったら確かに歌舞伎町には人がかなり居た。あまりの人通りの違いに驚いた)。

 その日、出かける前に友人に軽い感じで夜の街に行ってくると伝えたら、どうも罵倒を飲み込ませてしまったらしい。らしい、というのは既読スルーだったのでそれに突っ込んだら、ブラックな返ししか思いつかなかったからと。ちょっと浅はかだったな、と反省した。無闇に遊び歩いているつもりではないが、それをよしとしないのは間違いじゃないし。飲み込んでくれたけれども、罵倒されててもやっぱり伝えるのは浅はかだったと反省しただろう(ちなみに誤解がないように言うと、罵倒と書いているが叱責くらいです、本当に友人に言われたとしても)。いくら街に人が少なかろうと、僕が無症状感染をしていないという保証はない。じっと家で耐えることのほうが正しい、とまでは言わないけど、そのほうが答えがない解答としての行動として正解に近い。そう思う。それでも僕は行くことを選んだのだから、こういうこともあるというのを、失念してただけだ。友人は優しいので、飲み込んでくれて、かつ伝えてくれたのだ。たとえ、しばらくその友人が僕に会うのを拒否したところで、責める気にもならない。当然だ。その選択をしたのは僕だし、不用意に伝えたのは僕なのだ。

 さておき、店は盛況であった。久しぶりの面々を眺め、本当に懐かしい再会もあり、また新店舗でと笑って手を降ったりした。閉店のままにせず、移転再始動を決めてくれた店主のおかげで、笑って別れられる。でも、この場所で、この空気感で、は、もう最後なのだと寂しくもなった。寂しくなりに来たわけじゃないけど、どうにもしょうがない。拠点が、場所が変わるというのは、そういうものなのだ。1階も2階も写真を撮った、いろいろな場面で利用させてもらったし、お世話になった。店主以外の歴代のスタッフも今週は日替わりでいる。友人になったスタッフも、友人がスタッフになったこともある。その時々で、覚えてたり覚えてなかったりの空気感がある。もちろんいいことばかりでもないけれど、それもこれもきっとまたこの写真を見返す頃にはいい思い出であろうとも思う。14年間、ありがとうという気持ちしか今はない。本当に16周年まではここは存在すると思い込んでいた。それだけは残念だけど、新店舗を楽しみに楽しい夜をありがとうと言うしか無い。そう、幸いなことに新店舗移転が決まっているのだ、それは本当に喜ばしいことだ。今の場所にはもう二度と行けないけれど、新しい場がある。いろんな店が閉店して、二度と行けなくなる、場もなくなるなか、本当にありがたい。そしてその店で、また会ってくれる人がいるって嬉しいなって、本当に思った。行って良かった。

 ちなみに、店はクラウドファンディングを開始していて、あちこちで既に書かれているが支援によって読むことができる『新店舗建設日記』という、閉店に至る経緯と新店舗開店までのリアルタイムブログが非常におもしろい。オーナーが変わって家賃が3倍だけでもびっくりしたけど、その詳細が本当にえらいこっちゃである。クラウドファンディングはまだ期間があるのでよかったら。よい店です、きっと新店舗も。

camp-fire.jp
 知人の店は多分このコロナ禍の中、珍しいパターンだと思う。飲食もそうだが、ライブハウスの新しい日常はもはやライブハウスという存在の意味を変えるが如くの発表だった。無論、Beforeコロナでも無言で見るライブもあったし、行っていた。けど、すべての場所で踊るな、くっつくな、歌うな、黙ってろ、という新しい様式は、どうにも僕には合わない。静謐なコンサートもいいが、踊って、歌って、拍手して、はいつか戻ることがあるんだろうか。まだまだ先は見えないし、その間にもいろいろな場所や店が減ってしまうんだろう。CAMPFIREには、そういうクラウドファンディングはたくさんあった。達成しているのは、本当にごく一部、なのだ。


片想い「踊る理由」